ロッテ
彼女が初めて戦車に乗り敵と向かい合ったのは1940年6月である。
北アフリカのカプッツォ砦で繰り広げられたこの戦いで彼女は何も戦果を挙げられなかったが戦場を支配するのは技量と勇気だけではない事を知った。
優れた技量と溢れる勇気を兼ね備えた戦士であっても運命を操る女神がそっぽを向けば戦場に骸を晒さねばならなくなる。

以後、彼女はハルファヤ峠やトブルクを駆け巡って幾多の戦果を挙げ、戦車隊でそれなりの知名度を得るに至ったがガザラの戦いで大きな転機を迎えた。
相手が戦車であるのならバレンタインだろうがM3グラントだろうが地形を利用し撃破可能距離まで接近すればなんとかなる。
しかし機関砲を装備したハリケーン戦闘機が相手となるとそうもいかない。
戦場の生態系ピラミッドで戦闘機は戦車の上位に位置する。
擬装網の下に隠れたまま、ひたすら敵機が上空を過ぎるのを待つだけだ。
そうした「かくれんぼ」が幾たびも繰り返され彼女はいつも生き残った。
そう、彼女は生き残ったのだ、最後の空襲でも。

最後の空襲で愛車のV号戦車G型は炎上したが彼女は重傷を負いつつも脱出に成功し療養の為、本国帰還を命ぜられた。
そして彼女は東部戦線の第130戦車隊に転属してきたのである。


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