事の始まりはひとつの質問からだった。
> 『メンフィス・ベル』等の戦争映画でよく出てくる側面銃座ですが、実際そんなに役に立つものだったのでしょうか。
お察しの通り「役に立たない」からB29あたりで消えていったんだろうね。
第2次大戦中、側面銃座を重視したのは日米、しなかったのは英独ソだ。
おっと、機体側面に機銃を装備した機体としては独のMe410があるが、これはゲテモノなので例外とする。
さて、側面銃座の意味合いだけどまず迎撃機が側面から来た時の対処ならびにブリスター式の場合は上方、下方、後方に若干の射界を有する事が挙げられる。
反面、胴体が太く成らざるを得ず機体重量が大幅に増す。
ブリスター式の場合は空気抵抗も増すから弊害はなお大きい。
おまけに左右へ撃つとなると乗員2名を要するから...
いやはや百害あって一利無しとは側面銃座の事だ。
考えてもみてよ。
機体上部に連装銃塔を付けとけば、1人の乗員で左右どちらへでも2門撃てる。
ところが側面銃座は殆ど単装。
だから2人乗りながら各1門だ。
左右同時に来た時?
そんな殆どあり得ない状況に対処する為、側面銃座を設置したとするなら設計者なり発注者なりをすげ替えた方が国益となろう。
だいたい側面から迎撃機が接近する事自体、あまり起こり得ない状況なのだ。
なにしろ爆撃機と迎撃機の双方が時速300キロ以上で常に運動し続けているんだよ。
それが射的100〜200mでうまく接近するのは不可能だと言える。
どうしても行き過ぎるか、出遅れるか、高度が合わないか、軸線の同調が取れないかで射撃機会を逃してしまう。
機銃を撃ち続けながら爆撃機に接近すれば良いと思われる方はもう一度「装弾数の話(GS資料集
Vol.2に収録)」を読み返して欲しい。
戦闘機の装弾数はそれほど多くはないのだ。
よって爆撃機の側面銃座は無用の長物なのである。
と、説明したら...
> 側面銃座が有効でないのは良く判るのですがその他の銃座でもっとも有効なのはどこでしょうか?
との質問が来た。
なるほど。
それではまず銃座を機首、機体上部、機体下部、尾部、主翼の5カ所に区分して比較しよう。
「主翼に銃座なんてあるの?」って声が聞こえて来そうだが92式重爆(日)やPe8(ソ)、P108(伊)、Bv222(独)ではちゃんと装備されているのだ。
えっ、B35(米)も主翼に銃座があるって?
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そりゃあるだろう、機体すべてが主翼なんだから。
更に...
> 僕としては最後に装備された機首下部が有効でなく射界の広い上部と下部の銃塔が有効だと思うのですがいかがでしょうか?
確かに射界が広ければ有効性は高いと言える。
だけど「どの角度からも平等に敵機が来襲する」と言う物でもない。
例え射界は狭くとも重要な銃座はある。
それが尾部だ。
ヘリコプター以外の航空機は常に高速で運動しており、双方が高速運動しながら射撃するので短時間に多くの射弾を浴びせねばならない。
大抵の場合、迎撃機は機首に火器を装簿し接近しながら撃つ。
となれば爆撃機が前方から射弾を受けるのはすれ違う時だけであり、爆撃機の機首銃座が役立つのも「すれちがう時だけ」となる。
まあB17G型みたいに横まで射界がある銃塔ならそれなりに役立つ事もあるが。
ボーイング B17G |
さてそれでは仮に火器の有効射程が200m、発射速度毎分600発と仮定しよう。
双方が5360km/hですれ違うと相対速度は720km/hで、1秒に200m距離が縮まる。
と言う事は1秒しか撃てないんだから、火器を2門装備していたとしても射弾数はたった20発にしかならない。
爆撃機の機首銃座にしても条件は同じで「すれちがいざまの空戦」は双方が短時間、火器を発射するだけで実害は至って少ないのである。
それに比べ追尾戦は...
その気になれば残弾が無くなるまで追いかけて撃ち続けるのだから恐ろしい。
よって爆撃機乗りは尾部銃座が欲しくなるのである。
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