小火器と弾薬


1942年8月、ガダルカナル島に上陸した米第1海兵師団はボルトアクションのM1903小銃装備(ガダルカナル島戦末期に投入された第2海兵師団や陸軍の師団はM1自動小銃装備)にもかかわら日本軍を相手に激戦を繰り広げ一歩も退かなかった。
それに対し1943年2月、米第34歩兵師団はM1自動小銃を装備していたのにカセリーヌ峠でボルトアクション小銃装備のドイツ軍にアッパレ大敗走を遂げたのである。
確かに米海兵隊は精鋭だ。
しかしガダルカナルに上陸した時点では初陣なのでさして米陸軍師団と能力的に差があったとは考えられない。
だとすれば「一般的には優秀と思われがちな自動小銃」を装備している米第34歩兵師団の方がもうちょっと頑張れそうに思うのだがあにはからんや結果は上述の如しとなった。
上記2例だけで「ボルトアクション小銃の方が自動小銃より優秀」と断じる事はできないが僕としては「自動だろうがボルトアクションだろうが大した差はない」と思っている。
それでは小火器の話を少しばかりするとしよう。

軍事資料データベースでも書いたが小火器の性能を決定するのは弾薬と銃身長である。
同じ弾薬を使用するなら銃身長の長い方が初速が速くなりパワーが増す。
例えば英軍が使用したSMLE小銃(重量3.9kg)は銃身長640mmで739m/sだが同じ.303ブリティッシュ弾(7.7×56:口径mm×ケース長mmを表す、以下同じ)を使用しながらも銃身長を475mmに切りつめたNo5−1小銃(通称ジャングルカービン:重量3.25kg)では727m/sに低下する。
日本軍が使用した38式実包(6.5×50)の場合、38式歩兵銃(銃身長797mm、重量3.95kg)では765m/s、38式騎兵銃(銃身長419mm:重量3.34kg)では708m/sであった。
パワーが低下したのだから反動も低下したのだろうか?
そんな事はない。
逆に反動は大きくなった。
同じ弾薬を使用しているのだから基本的に反動は同じ様に見える。
ところが銃身が短くなった為に小銃の重量が小さくなり発射反動の抑えが効かなくなってしまったのである。
なら銃身を長くして小銃の重量を増加させるのが「良い小銃」なのだろうか?
兵隊がみんな「力持ち」で長い銃身を持て余さない程の「大男」揃いならそれも良いかも知れない。
でもそうは行かないから程々の長さと重量で適度な許容範囲の反動の銃が「良い小銃」となる。
民族によって若干の体格差はあるが極端な差にはならないのでブルパップ銃などの例外を除くと小銃の銃身長は自ずから決まってくる。
となると小銃のパワーは弾薬によって左右される事になる。
基本的に小銃用の弾薬は弾頭とそれを撃ち出す装薬で構成されており「同じ弾薬を同じ銃身長の火器で発射」するならばパワーは大体、等しくなる。
こうしたパワーを示す指標として初速と弾頭重量が挙げられる。
初速が同じなら弾頭重量の大きい方がパワーも大きいし弾頭重量が同じなら初速の大きい方がパワーが大きい。
更に弾頭重量に代わる指標として口径を使う事もできる。
口径が大きい方が質量が大きいのは当然であろう。
だが一般的に口径の大きい弾薬の方が弾頭重量が大きいと言えるものの同一口径であっても時代の趨勢によって大きな差が生じる場合もある。
それではそうした例について若干、説明しておこう。

第1次世界大戦以前、各国の小銃は初速よりも弾頭重量にパワーを求めた。
例えば米軍の場合、M1903小銃用として開発された30−03弾(7.62×63)は弾頭重量14.2gで初速700m/sであり日本軍が30式小銃用に開発した30年式実包(6.5×50)は弾頭重量10.4gで初速700m/sだった。
ところが後世になると弾頭重量より初速に関心が高まり米軍は同じ7.62mm弾で同一ケース長ながら弾頭重量9.9gで初速820m/sの30−06弾、日本も同一口径、同一ケース長で弾頭重量9g、初速765m/sの38式実包に移行する。
同じケース長の薬莢で撃ち出しても弾頭重量が軽いと初速はかなり速くなる。
よって初速の高低だけでパワーを判定する事は出来ない。
それでは如何にして小銃のパワーを判定するのが良いだろうか?
弾頭重量(もしくは口径)と初速で比較するのが一般的だがケースサイズで比較するのも良い方法である。
ケースサイズはケース長とケース太さから容量を算出すれば良い。
それではケース容量だけで比較して良いのだろうか?
残念ながらそれでも充分ではない。
必ずしもケース一杯に装薬が充填されている訳ではないし装薬の質的差もある。
とりあえず主力小銃弾薬(口径×ケース長×ケース太:容量)を列記してみよう。

米: 7.62×63×12.01:7121 (30−06弾)
独: 7.92×57×11.94:6230 (8mmモーゼル弾)
ソ: 7.62×54×12.37:6517
英: 7.7 ×56×11.68:5915 (.303ブリティッシュ)
日: 7.7 ×58×11.89:6339 (99式実包)
日: 6.5 ×50×11.35:5100 (38式実包)
伊: 6.5 ×52×11.43:5304

一般的には第2次世界大戦時の小銃弾薬は米独ソが三傑で日英の7.7mmがこれに続き日伊の6.5mmは後塵を拝すと言われている。
でも上記の数値では日本の99式実包の方が独の8mmモーゼル弾よりケース容量が大きい。
なぜだろう?
これには理由がある。
日本陸軍では大正期、小銃及び軽機関銃用、重機関銃として6.5mmの38式実包を使用してきた。
だが6.5mm弾では重機関銃用としていかにも頼りない。
そこで92式重機関銃の採用と共に重機関銃の口径を7.7mmに拡大した92式実包が量産される様になった。
重機関銃用なんだから92式実包はハイパワーである。
かくして日本陸軍は6.5mm弾と7.7mm弾を混用する事になったのだがこれは補給面で甚だしく不合理である。
よって小銃と軽機関銃も7.7mmに拡大する事になったのだが92式実包は小銃で使用するには余りにもハイパワー過ぎた。
仕方ないので日本陸軍は92式実包と同じサイズで装薬量を少なくしリム形状を変更した新弾薬として99式実包を制定しこれを撃つ為に1式重機関銃を開発するに至った。
こうした理由により99式実包はケース容積の割りにローパワーなのである。
初速で見ると8mmモーゼル弾を使用するKar98kが760m/sなのに99式実包を使用する99式小銃は730m/sでしかない。
ましてや99式小銃の場合、戦後の一時期、自衛隊に装備された時、米軍の供与の30−06弾仕様に薬室を改造したところ、強度不足でかなりの銃が壊れてしまうと言う障害も発生した。
この事からも99式実包が三傑より低パワーだと言える。

なお99式実包のパワーが低いとは言っても「小銃用弾薬同士を比べればの話」であって拳銃用弾薬に比べれば日伊の6.5mm弾ですら「かなりのハイパワー」であり「ちゃんと肩付けしなければケガする程度」の反動が生じる。
それに対し拳銃弾は「肩付けはおろか片手でさえ楽に撃てる程度」の反動しか生じない。
では小銃弾と拳銃弾ではどの程度のパワー差があるのだろうか?
主だった拳銃弾のデータを以下に記す。

米: 11.4×23×12.09:2599 (.45ACP)
独: 9   ×19×9.93 :1432 (9mmパラベラム)
ソ: 7.62×25×9.65 :1838 (トカレフ弾)

ドイツで使用された8mmモーゼル弾(7.92×57)と9mmパラベラム弾(9×19の)ケース容積差は4.3倍にもなる。
米軍の30−06弾と.45ACP弾の差は2.7倍。
ソ連の7.62×54弾とトカレフ弾では3.5倍。
小銃では最弱の38式実包と拳銃では最強の.45APCを比べても約2倍の差があるのだ。
サンダース軍曹は「タタタタッ」とトンプソン短機関銃を撃ちまくりいとも簡単に次々とドイツ兵を倒していくが実際には低パワーの拳銃弾をばらまいているだけなので100m以上の距離があったなら小銃弾と拳銃弾では勝負にならない。
だがパワーが低いと言う事は必ずしも欠点とは言えない。
パワーが小さければ反動もまた小さいのだ。
低パワーの拳銃弾だからこそ「タタタタッ」と連射できるのでありハイパワーの小銃弾を連射するには重量10kg程度の軽機関銃が必要になる。

4kg程度の火器で小銃弾を連射したら?
体を壊さず銃身も加熱させずにそれが可能なら10kgの軽機関銃を作る軍隊はない。
それでは自動小銃は?
私の場合、ボルトアクションの小銃で5発撃つのに約9〜10秒かかる。
これが自動小銃をセミオートで撃つと大体、7〜8秒くらいになる。
なぜセミオートでもそんなにかかるかと言うと1発撃つたびに反動で銃が跳ね上がり再照準しなければならなくなるからだ。
陸自が発表しているカタログデータでもM1ガーランドの速射能力は最大で毎分32発、持続で16発に過ぎない。
M1ガーランドの弾倉は8連クリップだから8発毎に装填しこれに3秒かかるとすれば32発の発射は装填に12秒、1発毎に1.5秒であり僕の連射能力と同じになる。
一方、ボルトアクションの場合、反動で跳ね上がった後、銃を降ろしながら遊底を操作し再照準に移るのでセミオートに比べそんなに発射速度は遅くならない。
ちゃんと照準して人間に当てようとするならボルトアクションだろうとセミオートだろうと大して差は無くなるのだ。

照準せず腰だめで撃つのならセミオートだと3〜4秒で5発撃つ事もできるが10m以内でなければ人間への命中は期待できない。
自動小銃と言う火器は結構、ハンパな兵器なのである。
それでは第2次世界大戦に於ける各小火器の定義と役割を説明しておこう。
まずは小銃。
ハイパワーな小銃用弾薬を使用するので全射程に渡り射撃可能である。
ただし連射できないので制圧力は低い。
次に軽機関銃。
ハイパワーな小銃用弾薬を使用し全射程に渡り多大な破壊力を発揮する。
連射できるので制圧力が高いが重量も大きく最低2名以上の人員を要する。
最後に短機関銃だがこれは低パワーの拳銃弾を使用する。
連射できるのでとても制圧力が高いが射程が短距離のみに限定される。

こうして小銃、軽機関銃、短機関銃の三本立てで第2次世界大戦の歩兵用携行小火器(あえて拳銃、重機関銃、擲弾筒、小型無反動砲、ロケットランチャーなどは除く。カービンについては後述する。)は始まったのだが大戦末期になって突撃銃が加わった。
突撃銃とは連射が可能な自動小銃だが軽機関銃や短機関銃の様に持続して撃てる訳ではない。
もし軽機関銃の様に撃てるなら軽機関銃の存在意義など無くなってしまう。
突撃銃の連射では反動が物凄いので初弾以外は極端に命中率が低下する。
よって近接戦以外での連射は殆ど無意味となる。
だがそれでも大部分の歩兵が近接戦で短機関銃に準ずる制圧力をもつので突撃銃を装備する事の戦術的意義は大きい。
たとえば市街戦で短機関銃兵1名が小銃を持った敵5名に遭遇したとする。
イニシアチブを取れる状態(例えば伏撃とか)ならばたちどころに5名を撃ち倒す事もありえるかも知れない。
けれど小銃兵1名だったら敵を1名ないし2名倒すのが関の山だろう。
まあ、ベテラン狙撃兵だったら1名撃って身を隠し、1名撃って身を隠しを繰り返し敵を全滅させる事も可能だろうがそれは遭遇戦ではない。
短機関銃は市街戦に於けるスーパーマンであり突撃銃の意義は全歩兵のスーパーマン化を表す。
そしてこの突撃銃と言う火器は小銃ほどではないにしても300m位の射程で充分な命中精度を持っているのだ。
何故、突撃銃は連射と長射程射撃の双方が可能なのか?
その鍵は拳銃弾より強力で小銃弾より弱い新型弾薬の登場にある。
7.92mmクルツと呼ばれるこの弾薬はケース長がこれまでの8mmモーゼル弾の57mmに比べ33mmと短い。
9mmパラベラム弾のケース容量を1とした場合、クルツは2.51、8mmモーゼル弾は4.3になる。
クルツ(ドイツ語で短いの意)はまさに小銃弾と拳銃弾の中間に位置する弾薬と言えよう。
それではクルツ無くして突撃銃の誕生は無かったのであろうか?
いや、クルツではなく8mmモーゼル弾の突撃銃も存在した。
ただし失敗作として...
空挺部隊用に開発されたFG42がこれで僅か数千丁しか生産されなかった。
一般的に「史上初の突撃銃」は帝政ロシアのフェデロフM1916とされるが「史上初の量産型突撃銃」となるとクルツを使用するMP43である。

こうしてドイツに於いて誕生した突撃銃は東部戦線の好敵手ソ連に大きな衝撃を与えた。
隣の芝が青ければ自分の芝も青くしたくなり隣が突撃銃を配備すれば自国も開発したくなるのは人間の性であろう。
もとよりソ連は自動火器の配備に熱心であり第2次世界大戦中に生産した携行小火器中、短機関銃の占める割合が34%(独は11%)にも上っていた。
ただしソ連軍の場合、当初から全軍に突撃銃を配備する心算はなかった。
小火器による交戦を主任務とする歩兵部隊にだけ突撃銃を配備し他の兵科の部隊には自動小銃を配備する予定でいたのである。
ただし突撃銃と自動小銃の弾薬は共通化が図られこの為に7.62mm×39の新弾薬が開発されるに至った。
かくして登場した自動小銃がシモノフによって1945年に設計され大戦終結直後、制式化されたSKS(シモノフ自動カービンの略)である。
更に1947年にはカラシニコフにより突撃銃(AK47)が設計され1949年から量産されたが当初、ソ連軍が考えた様に自動小銃と突撃銃の並行量産には至らずSKSは早々に量産が打ち切られた。
これはあまりにAK47が優秀であり中途半端な自動小銃のSKSを配備する意味が薄れたからに他ならなかった。
とは言えSKSも決して悪い銃ではない。
「折り畳み銃剣が最初から付いてる事」の他には欠点がなく実に撃ち心地が良いバランスの取れた銃である。
北京やグァムでAK47とSKSを並べて撃ち比べた事があるがSKSの方が数撃った時の疲労感が少なかった。
もしも「市街戦や密林戦など連射を必要とする不規則遭遇接近戦が絶対に発生しない」と確証があるのならAK47よりSKSの方が良いと僕は思う。
でも戦場でそんな確証はないであろう。
よってスポーツ銃的視点で言えばSKSの方が上、軍用銃としてはAK47の方が上と言えよう。

さてそれではついでにここでカービンと言う用語について説明しておこう。
多くの方は御存知と思うがカービンとは騎兵銃の事である。
それでは「カービンを持っているのは騎兵か?」となるとそうでもない。
元来、カービンは騎兵が装備していたのだが第一次世界大戦後、各国陸軍で騎兵が減少すると共にカービンの意味が大きく変化していった。
例えばドイツ軍の主力小銃はKar98k(名称末尾のkは短いの意)だがこれは98型短カービンの事である。
Kar98kを装備するドイツ兵が全て騎兵ならばドイツ兵の大部分が騎兵になってしまう。
ドイツ軍にとってのカービンは「普通の小銃」と言う意味に他ならない。
Kar98kのパワー?
三傑の一角をなす8mmモーゼル弾だからかなり強い。
北京で実銃(中国製のライセンス品だが)を撃ったがボルトアクションらしく短くて強い反動がガツンときた。

さて日本陸軍に於いてのカービンは如何なる物か?
日露戦争後に38式騎兵銃を制式化したものの騎兵から総スカンをくい新たに44式騎兵銃が開発された事は別項に述べた。
それならば38式騎兵銃は量産されなかったのであろうか?
そんな事はない。
騎兵用に44式騎兵銃が約10万丁あまり生産(「日本の軍用銃」P47)されると同時に38式騎兵銃がその4倍以上も生産されたのである。
当然、砲兵や輜重兵など騎兵以外が装備する火器として。
こうなると騎兵銃=騎兵でなく騎兵銃=歩兵以外が装備する火器に他ならない。

次に英軍だがSMLE小銃の系列下にあるNo.5小銃が通称ジャングルカービンと呼ばれている。
ジャングルカービンを直訳すると密林騎兵銃となるが騎兵が密林で使用する火器ではない。
この銃は密林戦に対応する為、全長を短くし重量を軽くしただけであり騎兵とは何も関係が無いのである。

今度は米軍のカービンについて。
米軍もまた第2次世界大戦参戦直前、M1カービンと言う銃を制式化したが当時の米陸軍には戦闘を目的とする乗馬騎兵は殆ど存在しなかった。
米第1騎兵師団など名称には依然として「騎兵」と言う文字が存在していたが実体は普通の機械化歩兵師団である。
よってこの銃は将校や司令部要員、小火器による戦闘を主任務としない部隊(砲兵や工兵など)に配備された。
コンバットでヘンリー少尉がもっているのがこれである。
なおこの銃だけは他国のカービンと違い小銃弾ではない固有の弾薬が開発されている。
よって他のカービンは「小銃の一種」と言えるが米軍のM1カービン(及びその改良型であるM2及びM3カービン)は小銃のカテゴリーに含めない「特殊な銃」として考える必要がある。

この銃の弾薬(7.62×33、通称.30カービン弾)はボトルネックでは無いので薬莢の直径がとても細い。
つまりケース長は33mmあってもケース容量は2098しかないのである。
当時、米軍が使用していた拳銃弾は.45ACP(コルト.45ガバメントやM1トンプソン、M3グリースガンなんかで撃つ弾)だったがこれのケース容量は2599、小銃弾は30−06(M1ガーランドやBARで撃つ弾)でケース容量が7121だった。
つまり.30カービン弾は小銃弾と拳銃弾の中間どころか拳銃弾以下の弾薬でしかない。
北京でM1カービンを撃った事があるがなんとも頼りない撃ち心地で「オモチャの鉄砲(それでも人に当たれば死傷するが)」みたいな感触だった。
たまに「M1カービンを連射化したM2カービンは突撃銃の開祖」などの記述を見かけるが僕としてはとても賛同できない。
あれが突撃銃の開祖だったらPPSh41短機関銃だって立派に「突撃銃の開祖」と名乗れるだろう。
とは言え僕はM1カービンを駄銃だとけなしている訳ではない。
M1カービンを歩兵部隊の小銃手に持たせたら駄銃だが砲兵や工兵のサイドアームとしてなら「この上無い名銃」となるのだ。
無理して小銃弾のカービンとしなかった所に米国の大胆さと裕福さがある。

独: 7.92×33×11.94:3607 (7.92mmクルツ)
ソ: 7.62×39×11.25:3840
米: 7.62×33×8.99 :2098 (.30カービン弾)

それではカービンの話に続き戦後、西側陣営に大きな影響を与えた7.62mmNATO弾(7.62×51)について解説しよう。
この弾薬はソ連が7.62×39を採用しAK47の量産を押し進めているさなか、「資本主義国家間の小火器用弾薬共通化」を提唱する米国により1953年(一説には1954年)に採用された弾薬である。
また共通化の主旨は「資本主義国家間の弾薬統一」のみならず軽機関銃と小銃の弾薬共通化にもあった。
なお7.62×51が選ばれた理由は米国が自国製弾薬を強硬に主張したからであるが資本主義国家に於ける小火器弾薬の共通化は大変、有意義であると考えられた。
だが...

7.62NATO弾のケース容量はM1ガーランドの30−06弾よりだいぶ小さいが装薬量はほぼ同じであり弾頭重量や初速もあまり変わらない。
つまり7.62NATO弾は見かけよりかなりハイパワーな弾薬なのである。
こうした弾薬を突撃銃で使用したらどうなるであろうか?
フルオートで連射したらかなり危険な状態に陥るであろう。
英陸軍は当初からこの問題に気がついていた。
よってNATO諸国の標準としてこの弾薬が検討された時、英陸軍は強硬に反対したのであるが米陸軍によって押し切られてしまったのである。
やむなく英陸軍及び英連邦諸国ではセミオートでしか射撃できないL1A1小銃を採用する事にした。
厳密に言えばL1A1小銃はフルオート射撃できないので「突撃銃」と言えない。
米国につぐNATO第2位の軍事大国である英連邦諸国家が「自動小銃」に甘んじ「突撃銃」を放棄したのは戦力的に大きなマイナスとなった。
グァムでL1A1小銃の原型であるFAL小銃をセミオートで撃った事があるがかなりの反動を感じた。
一方、NATOの一角でありながら独自の防衛施策を推し進めるフランスは7.62NATO弾そのものを拒否し自国製の7.5mm×54弾を使用するMAS49小銃(装弾数10発)を採用(1951年量産開始)した。
この銃もフルオート射撃のできない「自動小銃」である。

さて、日本はNATO諸国では無いものの米国の同盟国である為、7.62NATO弾の採用を迫られた。
これに対する日本の回答は「弱装弾によるフルオート射撃」であった。
思えば戦前、7.7mmへの弾薬共通化の際、92式実包が小銃弾薬としてハイパワー過ぎた事に対する対処が「同一サイズながら弱装弾である99式実包の採用」であった事を考えると如何にも日本らしい選択であったと言えよう。

なお弱装弾を使用する日本の小銃は天下に名高い64式小銃だがレギュレーターを替える事でNATO常装弾も撃てる。
ただし僕の知人の陸自武器科幹部の言によれば国産のNATO常装弾は使用可能だが外国製の場合は撃針がふらつくので相当の頻度で装填時に早発を起こすそうな...
「いや、そんな事はない」と言っている識者や陸自関係者もいる。
本当の所、どっちなのか判らない。

初速は弱装弾の場合で700m/s、常装弾では800m/s。
これを同クラスの7.62mm弾を発射する他の銃と比べてみよう。
まずM14が850m/s、ついでL1A1が830m/s、G3が790m/s、最後にAK47が710m/s。
つまり日本が採用した弱装弾は見かけのケース長は51mmであっても実際のパワーはケース長39mmのカラシニコフ弾レベルだと考えられる。
これはもはや弱装弾と言うより「別の弾薬」と考えた方が良いかも知れない。
結局の所、日本は7.62NATO弾を採用したと言っても日本の弱装弾は他国軍で使えず他国の常装弾も日本で使えない変な話になってしまったのである。
ちなみに64式小銃は反動が少ないのが特色であるが弱装弾のみならず銃口制退器の採用によっても反動の30%を軽減している。

残念ながら僕は他国の突撃銃を撃った事はあっても64式小銃を撃った事はない。
武器輸出禁止法がある限りこれからも撃てる見込みはないので前述した銃に比べどれだけ反動が少ないのか判らず残念至極である。
なお巷間で発表されている64式小銃の最大発射速度は毎分500発であるが持続発射速度はM1ガーランドより遅い毎分10発(本当かいな?と思ってるが)である事を申し添えておく。

次に7.62NATO弾を無理矢理、同盟国に押しつけた米国であるが...
提唱者である以上、当然の事として7.62NATO弾使用の突撃銃M14と軽機関銃M60を開発し双方とも1957年に制式化した。
M14の部隊配備は1959年7月からである。
しかし...
配備はされたもののM14は長く重く反動が大きすぎると評価され1966〜68年に大部分がM16(1963年制式化)へと更新されるに至った。
主力小銃の座についていたのは僅か8年に過ぎなかった。
ただし大きな問題が生じた。
M16はM14より短く軽く反動も適度なのでフルオート射撃でも問題はない。
だがM16の口径は5.56mmで弾薬が.223レミントン(5.56×45:後に各国で使用され5.56NATO弾となる)でありM60軽機関銃と弾薬が互換で無くなってしまったのである。
西側最大にして最強である米陸軍と海兵隊の全歩兵分隊が2種の弾薬を装備せねばならなくなったのは痛恨の一事と言えよう。
各国が米国に追随して5.56NATO弾の突撃銃を開発しミニミなど5.56NATO弾用の軽機関銃が登場する事によって初めて資本主義国家間の小火器用弾薬共通化(残念ながら89式小銃への更新は遅々として進まず自衛隊の行事でも64式小銃を見る事ができるが)は果たされたのである。
だがその頃にはライバルであったソ連が崩壊(1991年)し小火器用弾薬の共通化はあまり意味をなさなくなっていた。

かくして7.62NATO弾はスペック通り絶大な破壊力を発揮した。
社会主義陣営に対してではなく資本主義陣営に対して...
当初の予定通り歩兵分隊に7.62NATO弾の突撃銃と軽機関銃を配備できた資本主義大国は独(G3突撃銃とMG3軽機関銃)、伊(BM59突撃銃とMG3軽機関銃)、トルコ(FAL突撃銃とMG3軽機関銃)の3国だけだったのである。
ちなみにこの3国は大戦中、枢軸国及び親枢軸中立国であった。

米: 5.56×45× 9.55:3255 (.223レミントン)
米: 7.62×51×11.84:5574 (7.62mmNATO弾)

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