空中集合
それでは空中集合について述べよう。
本稿に於ける空中集合とは複数の空母から発進した編隊が進撃前に母艦上空で合同し、更に大きな編隊を組み直す事を言う。
よってまず航空機が編隊飛行する利点について考えねばならない。
航空機の単機行動の最大の欠点は迷子になる機体(洋上航法のできない単座機であればなおさらである。)が続出する点にあると言えよう。
しかしあまりにも編隊が大きくなるとこれまた迷子が多発(当時の日本海軍機は通信能力が低く場合によっては編隊内通信を有視界の黒板通信や手旗に頼っていた。)してしまう。
よって編隊には適正サイズがある。
また空中集合は意外と困難をきたす。
マリアナ沖海戦に際し日本海軍第2航空戦隊(隼鷹、飛鷹、龍鳳)から発進した第1次攻撃隊の場合、当初予定していた艦戦17、爆戦25、天山7:合計49機の空中集合に失敗し艦戦4、爆戦16:合計20機が別行動をとっている。

空母 隼鷹
軽空母 龍鳳

なお編隊の機数が多ければ多い程、攻撃時には敵の防御砲火や迎撃戦闘機による被害を分散させられるので「適正サイズのギリギリ」まで編隊機数は多い方が望ましい。


空中集合のロス
戦史叢書「ミッドウェー」348頁をみると飛龍の第1次攻撃隊(24機)の発艦所要時間は4分である。
よって1機あたり10秒となる。

空母 飛龍

なお同書では最終機発艦時刻をもって「攻撃隊発艦時刻」としている。
さて、それでは空中集合した場合、どれだけのロスが生じるのであろうか?
これには攻撃隊の攻撃隊発艦時刻と攻撃隊進撃開始時刻の差を見れば良い。
戦史叢書によれば大規模な空中集合をした真珠湾奇襲の第1次攻撃隊と第2次攻撃隊、ミッドウェー海戦のミッドウェー島攻撃隊の空中集合所要時間は全て15分だ。
99式艦爆の巡航速力は150ノット(戦史叢書「ミッドウェー海戦」)だし集合時間が1/4時間なのだから空中集合でロスする航続力は37.5浬となる。
つまり今回導入される空中集合3段階の「40浬」だ。
20〜40浬の切り替え式なのでお好きな状況でプレイして頂きたい。
また適正サイズを表す集合編隊規模も3段階の切り替えとなっている。


航続距離
さて航続距離によって最大攻撃距離が決まるのは簡単に御理解頂けよう。
そこで「航続距離とは如何なる数値か?」を考えて見なければならない。
航空機は燃料を消費して飛行するので当然の事だが、航続距離は燃料搭載量と燃費と巡航速度で決定される。
これら3要素のうち燃料搭載量は一定(資料によって多少の差はある)だが、燃費は搭乗員の技量によって大きく変化する。
零戦21型を例にとると森史朗著「海軍戦闘機隊1」によれば、中国戦線では125L/hだった燃費が1ヶ月の訓練によって115L/hに向上されている。
また台南空では更に燃費が向上して80〜85L/hとなり、最高記録では67L/h(坂井三郎上飛曹)に達した。
恐らく一般的な搭乗員の場合、100L前後(第204海軍航空隊戦記「ラバウル」87頁でも開戦時の平均を100Lとしている。)となろう。
よって最高記録を基準とした場合、台南空のベテラン達で航続力は83〜78%、一般的搭乗員では67%に航続距離は減少する。

97式艦攻

もうひとつ例を挙げよう。
海軍航空教範60頁では97式艦攻の航続距離を1231浬としている。
だがこれはどうやら偵察時らしく80頁では実用実験値1080浬となっており、しかもそれは「技量特に優秀なる者の成績の場合」で「技量優秀なる者の場合」だと700浬、「艦隊一般搭乗員」になると650浬、「技量未熟なる者」では600浬としている。
1/3の燃料で往き1/3の燃料で戦い1/3の燃料で帰るのなら最大攻撃距離は技量優秀で230浬、未熟で200浬だ。
でもこれは「帰投時に燃料タンクがカラッケツ」の状態を前提としているのであまり実際的とは言えない。
10%程度のマージンを考えると最大攻撃距離は一般搭乗員で約200浬となる。
よって空母戦記2では航続距離1080浬の97式艦攻の最大攻撃距離を200浬としてデータ化し、その他の航空機も一般搭乗員の航続距離/3(すなわちカタログ値の航続距離の19%前後)を最大攻撃距離の基準とした。
航続距離1000浬未満の機体については若干多く、1500浬以上の機体に少なく設定しておりゲームバランス上、問題となる機体についてはもっと多くの修正をかけているがだいたいの目安として頂きたい。

お試し版はここまでとなります。
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